- 人事制度の構築の必要性
- 人事制度は、目標管理と人事評価制度、職種ごとの資格制度、資格や評価と連動した賃金制度と昇給・昇格・昇進制度、職種間のコース転換制度、賞与制度などが有機的に連動した制度です。これだけの制度を継続的に運用させるマンパワーを割けない場合には、できるだけシンプルな制度にすることも必要です。
経営戦略の根幹をなす人事戦略を担っているのが人事制度です、人事制度とは、社員個々人の能力を伸ばす「人を成長させる仕組み」なのです。ですから、人事制度が機能しなくては人材育成や社員の活性化などは望めず、企業の業績向上などもままならないことになります。人事制度の構築または見直しは早く取りかかるべき課題です。
- 人事制度構築の方向性
- どういう人事制度にしたらいいのだろうか。これが一番難しい問いです。
最終的には、会社の実態に即して検討すべきですが、一例をお示しします。
人事制度の基本コンセプトは、より高い成果をあげるために、社員の職務遂行の能力の向上と人材育成が必要との考え方から、期待役割に重点をおいた職能資格制度をベースに成果主義を組み入れた制度とするのがよいとする方向性です。
その方向性で想定すると、人事制度の中身はこんな感じになります。
資格制度は、各資格ごとに期待役割・必要な能力・知識スキルを明確に設定する。目標管理による人事評価については、一般社員に対しては、目標達成度という業績評価だけでなくプロセス評価や勤務態度評価を取り入れ人材育成型にもウエイトを置き、管理職は、業績評価や職責評価という成果主義にウエイト置く形とする。
また、賃金制度についても、基本給を①生活保障的な意味合いをもつ「年齢給」を取り入れつつ②仕事の成果や貢献度を反映する「人事評価連動給」とする。賃金カーブは40歳ぐらいは右肩上がりとするも、管理職クラスは仕事の成果を重視した昇降給運用となるようにする。人事評価基準や資格体系・資格の必要要件を表す職能要件書などは、社員に周知し納得が得られなければならない。公平公正に実施された人事評価結果を社員にフィードバックして、今後の育成に役立てるものとする。
- 人事制度の再構築に向けてのスケジュール
- 人事制度を構築する場合には、次のような業務を実施することになります。企業様の現状分析により大きく変化します。実情に合わせ割愛する場合もあります。要する期間もケースバイケースですが、6か月から1年ほど要するものと考えておくのよいと思います。
(1)人事制度の設計の事前準備
・経営層・管理職層・一般社員へのヒアリング
・人事データ分析による人制度の現状分析と課題の抽出
資格等級制度、人事評価制度、目標管理制度、賃金制度等を対象
(2)人事制度の方向性の仮提案
・人事制度の現状分析をふまえた方向性の仮提案書の提示
(3)新人事制度の方向性を仮提案書を踏まえて検討
・人事制度構築に向けた基本コンセプトの明確化
・資格等級制度・職種(総合職・一般職等)の方向性
・人事評価制度の方向性
・賃金制度の方向性
・職種間の転換制度や昇格審査制度などの方向性
(4)各個別制度の設計
・職種の決定(総合職・一般職・製造職など会社の実態に即して
・資格等級制度の決定
・職種ごとの資格に対応した職能要件書(期待役割・必要知識スキルの明示)
・目標管理制度と人事考課制度の設計(人材育成型と成果主義型混合)
・賃金制度の設計(年齢給と成果給を取り入れた基本給の構成決定)
職種別賃金テーブルの設計、昇給・賞与の仕組みの設計
モデル賃金の設計・中途採用者の賃金決定の仕組みの設計
・昇格審査基準の設計(面接・試験・必要条件等の基準の設計)
・職種転換制度の設計
(5)決定した人事制度の導入準備
・新人事制度導入の意義をまとめた体系書の作成
・社員別の仮格付シュミレーション(新資格への移行のための仮格付)
・社員別新資格の決定
・管理部用の事務マニュアルの作成
・社員向け説明会資料の作成・Q&A集の作成
(6)新人事制度導入
・新人事制度の管理者向け説明会の実施
・新人事制度の一般社員向け説明会の実施
・管理職向けの人事労務研修の実施
・管理職向け人事考課研修実施
・社員へ新資格の通知
- 資格等級制度設計のポイント
- ①社員をどんな基準でランク分けし資格体系を作るのかの検討。
②職種(総合職・一般職・製造職など)をどの程度に分けるかの検討
③職種ごとの資格の必要条件(期待役割、能力レベル、知識スキル)の検討
③資格等級数(ランク数)をいくつにするかの、定義をどうするかの検討
④資格と現在の役職との関連をどうするのかの検討
⑤一般社員と管理職の違いをどのように織り込むのかの検討
⑥ラインマネジメントを行わない専門管理職の資格をどうするかの検討
⑦職種間の転換制度の仕組みの検討
⑧昇格の要件と審査制度をどうのようにするかの検討
- 人事評価制度設計のポイント
- ①目標管理制度の成果を重視する業績評価にウエイト付けを如何にするかかプロセス評価や勤務態度評価や行動・職責評価などの成果以外の評価をどのようにウエイト付けするかの検討
②目標管理制度で、営業社員や管理職と一般社員との差別化をどのようにするかの検討
③経営目標が各社員別の目標に落とされるような目標設定の仕組みの検討
④人事評価は誰が行い社員の評価をどのような要素(評価要素)で行うのかの検討
⑤人事評価の結果を処遇や育成にどのように反映させるか、どのように社員にフィードバックさせるかの検討
⑥考課者が公正な事実に基づいて評価ができるような考課者訓練を誰が行うのかの検討
まとめ
評価制度をしっかり作り、評価基準・評価ルールを明確にする。評価ルールを浸透させる。事実に基づいた評価を徹底する。
●●特に管理職は、評価者自身が評価されるということと部下指導責任があることを自覚して、部下の育成に力を尽くしていただきたい。そして自身のマネジメント力の向上を常に念頭において行動することが会社の発展にとって必要不可欠です。。●●
- 賃金制度設計のポイント
- ①賃金体系を成果給(人事評価反映給)だけにするのか、一部年齢給のような生活保障的賃金も組み込むのかの検討。これにより基本給の構成が決まる。
②①と同時に社員がやる気を起こす動機づけとしての賃金体系をどのうようにするかの検討
③新しい職種別等級別賃金テーブルと現行賃金体系との相違部分の確認。
④人事評価結果と昇給(降給)の関係をどうするのかの検討
⑤昇格時の賃金インセンティブをどのようにするかの検討
⑥昇格と役職への昇進との関係をどうするか、役職手当をどう見直すかの検討
⑦職種転換した場合の新職種の資格と賃金をどうするのかの検討
⑧中途採用者の賃金決定ルールの検討
⑨モデル賃金の人事戦略との整合性の検討
人事制度の構築は、企業の発展をを左右する重要な業務です。しかし、頻繁に改定をするものではないため、設計の専門家を社内で育成することが難しいのが実情です。また、アウトソーシングを活用するにしても、自社に合うコンサルタントをどう探したらよいかわからないという場合もあります。是非一度ご相談ください。